- ご挨拶 -

課題解決型高度医療人材養成プログラム

「慢性の痛みに関する教育プログラムの構築」 発足に際して
事業責任者からの挨拶

 山口大学大学院医学系研究科 整形外科学教授
田口敏彦
山口大学大学院医学系研究科整形外科学教授 田口敏彦

 この度、平成26年度に文部科学省から公募された「課題解決型高度医療人材養成プログラム − 慢性の痛みに関する領域 −」で、「慢性の痛みに関する教育プログラムの構築」として応募し、採択され、今年度から事業が開始されました。応募や採択に際してご支援ご協力いただいた関係の皆様にまず深く御礼申し上げます。
 慢性痛は人類にとって非常に大きな問題であるとともに、患者にとっても強い苦悩となります。諸外国では早くから、生物学的モデルの限界が指摘され、生物心理社会モデルの導入や、多職種による集学的な診療チームによる治療介入が進んでいます。
 本邦でも徐々にこうした取り組みが始まりつつありますが、こうした慢性痛に対する診療体系は、これまで医学教育のなかではカリキュラムとして存在しなかった領域であります。したがって医療従事者をはじめ大半の我が国の国民はこうした慢性痛に対する基礎知識や慢性化の機序、さらには治療についての知識を有していないことが本邦での大きな問題点となっています。こうした事実を踏まえ、慢性痛の基礎的知識から実践的知識を有する人材の養成が、将来的な我が国の慢性痛医療を支えるために急務であると考えられます。
 本事業は、連携5大学(山口大学、大阪大学、滋賀医科大学、愛知医科大学、東京慈恵会医科大学)の痛み治療の診療経験と臨床データ等の実績を活かし、痛みの評価や対応についての共通教育プログラムを構築します。それにより慢性痛教育を継続的に行い、学生教育とチーム医療のリーダーを養成するものです。また、大学間の講師の相互派遣・人事交流により専門家を養成し、全国均てん化に向けた慢性痛み教育ネットワークを構築し、地域における慢性痛医療に貢献するものであります。
具体的活動としては、山口大学に設置する慢性痛教育センターを拠点とし、指導方法、教育実習方法の開発(eラーニング等)、コミュニケーションスキル教材の開発、慢性痛を生物心理社会モデルに基づいて理解し行動する医療人の養成、講師の相互派遣調整、育成講師による一般向け公開講座等を予定しています。
 これらの実施により、多くの医療者が、患者を苦しめる痛みのメカニズムを理解し、非がん性疼痛やがん性疼痛(緩和ケアを含む)について、生物心理社会面から全人的に痛みを評価・対応していくことの概略を修得することでき、全国どこでも良質で高いレベルの慢性痛への対応が可能となります。
 特に慢性痛教育においては、こうした取り組みは我が国で初めてのものであり、世界的に見ても先進的な教育システムであると考えています。本教育プログラムによって、我が国の慢性痛医療が大きな変革期を迎えることを切望しております。
 多くのみなさまのご参加を心よりお待ちしております。