2020年3月23日

リーダー研修会を開催しました

 3月23日(月)、慢性痛医療のリーダー養成を目的とした海外研修の参加者等による報告会を web上で開催し、19名が参加した。
 ボストン大学並びにシドニー大学で海外研修を行った、山口大学の森先生と田原先生より、それぞれ以下のとおり報告があった。

ハーバード大学 Brigham and Women’s Hospital (BWH) Pain Management Centerにおける慢性疼痛治療見学 -山口大学麻酔科 森亜希先生-
  • Health Care Center, Chestnut Hill
  • 多くの患者に強オピオイドが使用されており、また侵襲的な治療を積極的に行っていた。新規患者が Primary Doctorから直接心理部門に紹介されたケースに立ち会ったが、日本では臨床心理士が初診で他の病院からの紹介患者を診察することはなく、アメリカの医療体制の特徴だと感じた。

  • Brigham and Women’s Hospital Main Campus
  • 手術室で Dr. Rossによる3件の手術を見学した。Spinal Code Stimulation(SCS:脊髄刺激装置)植え込み術 2件と Intrathecal Morphine(モルヒネ髄腔内投与療法)の Pump Exchange 1件である。

  • Brigham and Women’s Faulkner Hospital
  • Dr. Yongの外来、手術、リハビリを見学した。この病院は、Spinal Centerと呼ばれるが、三叉神経痛の新患も受入れ、痛み全般の診療を行っている。また、退院後のリハビリの必要性の判断に重きを置いていた。この病院では、今後日本に入ってくるであろう処置 2例を見学した。一つは、下肢の Complex Regional Pain Syndrome(CRPS:複合性局所疼痛症候群)に対する ProclaimTM DRG Neurostimulatorの植え込み術である。二つ目は、腰部脊柱管狭窄症に対して、Vertiflex社製のSuperion®というデバイス留置を全身麻酔下に留置する手術である。

    <総括・感想>

  • 慢性疼痛患者に強オピオイドを使用している。
  • 侵襲的治療が多く行われている。
  • 臨床心理士が慢性疼痛治療に参加している。
  • アメリカの医療保険制度の下では、受けられる医療サービスが制限される。
  • 受診する患者の訴え、疾患は日本と同じである。

 

シドニー大学Royal North Shore Hospital(RNSH)Pain Management Center(Professor Michael K Nicholas) における学際的な痛み治療の視察 -山口大学理学療法士 田原周先生-
  • ADAPT Program(集団認知行動療法プログラム)の紹介
  • 1グループ 6~7人、3週間 120時間のプログラムで、理学療法士、臨床心理士、看護師中心に行われている。かかりつけ医からの紹介を受けた患者が直接プログラムに参加したり(プログラムの適応外と判断される場合もある)、理学療法士や臨床心理士の介入を経て、プログラムに参加する場合もある。
    1週目は、目標設定、運動量設定、痛み教育、2週目は、薬の減量、痛み教育、運動療法、外出訓練、3週目は、痛み教育、運動療法、外出訓練といった内容になっている。運動療法はセルフエクササイズが中心。また、復職に向けた訓練も行われている。突発痛が起こった際の対策や外出時に調子が悪くなった際の対策なども個別に考えられている。プログラムのためのシステムが確立されていること、慢性疼痛患者にかかわるスタッフの充実、また、スタッフ同士の連携が徹底していることが印象的であった。

 報告を受け、会議参加者による意見交換が行われ、プライマリケアを丁寧に行うことで患者の症状に合った適切な医療を効率よく提供できること、看護師教育の重要性などが話し合われた。海外研修を通じて見識が広がり、自分たちの置かれた環境で、何ができていて何ができていないのかを確認することができた。今後の日本の診療システムに生かすべき点を確認する有意義な報告会となった。