- 活動報告 -

▶ 2019年3月21日 慢性痛教育センター主催「宇部・山陽小野田市民公開講座」を開催しました

 2019年3月21日(木)、ANAクラウンプラザホテル宇部で「宇部・山陽小野田市民公開講座~痛みでお悩みのあなたのために~」を開催し、一般市民や医療関係者ら 約90名が参加した。
 本学医学系研究科整形外科学講座の坂井教授の挨拶に続き、同講座鈴木助教が「慢性の痛みに関する山口大学での取り組み」と題して講演し、原因を特定できる器質的な痛みの他に、さまざまな要因の絡む機能的な痛みがあり、総合的な診察が必要だが、今の医学教育では痛みを系統立って学べないため対応が難しく、診察が不十分に終わるという問題がある。その解決のために文部科学省や厚生労働省がさまざまな事業を展開しており、山口大学も本講座をはじめとする取組みを実施し、総合的診療のためのペインセンターを立ち上げたと説明があった。また、自身が行っている外科的処置や近い将来実現見込みの臨床治験についての解説も行われた。
 麻酔・蘇生学講座の原田助教の「慢性の痛み診療の実際」と題した講演では、患者さんはとにかく痛みを止めてほしくて受診するが、痛みに万能薬はなく、慢性疼痛は除去できないため、生活の質の改善を目標にすべきで、運動療法の必要性や痛いから動きたくないと生活を変えない患者さんの意識改革のための患者教育の重要性、適切な運動のための診断の大切さについて説明があった。
 最後に、山口労災病院院長の田口敏彦先生が「腰痛でお悩みですか-腰痛の原因と対策-」と題して講演し、腰痛は高血圧や歯の病気と並び多い主訴であること、なぜ腰痛が起こるのかを椎間板の説明を入れてわかりやすく解説し、これまで原因がわかる腰痛は20%とされていたが、調査「山口pain study」により、整形外科医が丁寧に診断すれば、80%は原因を特定できることがわかったとの報告や、腰痛体操や日常生活における留意点についての説明があった。また、日常生活でやりたいことをやれることを治療の目標とすべきで、痛みを取り除くことは手段である。痛みのない日が幸せなのではなく、やりたいことをやれた日が幸せなのだと強調された。
 参加者からは、とても分かりやすかった、治療イコール生活できることだと分かり痛みに悩んでいたが安心した、との感想が寄せられ、参加者が痛みの診療への理解を深めた貴重な機会となった。

▶ 2019年3月2日 3度目の外部評価を受審しました

 平成28年度、29年度に引き続き、今後の事業内容の改善や活動に活かすため、認定NPO法人いたみ医学研究情報センターによる、平成30年度の取組みに関する外部評価を受審しました。
 評価は「慢性痛教育センターの設置」「慢性痛教育に携わる分野の医療リーダーの養成」「慢性痛教育資材の開発」の3つの観点項目について実施され、5段階評価の「4.ほぼ計画とおりに進んでいる」との評価を得ました。また、特にe-learning教材について、「幅広い分野を網羅しており、内容も理解しやく十分な知識の習得が可能であり、慢性痛教育に携わるリーダーの養成につながる」との高評価を受けました。本事業では、このたびの評価の結果を本HPにて広く社会に公表するとともに、外部有識者の声を基に、今後の事業実施に向けた改善に取組む所存です。

▶ 平成30年9月12~15日 2018 ISCoS Annual Scientific Meetingに参加しました

参加者  山口大学大学院医学系研究科整形外科学: 鈴木秀典

 2018年9月13-15日のISCoS 2018 – 57th ISCoS combined with the 25th ANZSCoS Annual Scientific Meetingと9月12日に開催されたpre-meetingに参加した。日常診療で遭遇する難治性疼痛の代表的基礎疾患は、重度脊髄障害や脊髄損傷に伴う異常疼痛やアロデニアである。本学会では、世界中から脊髄障害を中心にした多くの発表と講演が毎年行われている。特に脊髄障害と難治性疼痛に関してのリハビリや疼痛ケアに関するトピックスは、日常診療で多くの問題を生じている領域であるにもかかわらずまとまった知識の習得や意見交換を行う場が本学会以外にはないのが実情である。根本的な治療法としての種々の神経再生にかかわる最新の臨床治験データが示されるのも本学会の特徴である。
 脊髄障害と疼痛に関しては、4題の口演と3題のポスター発表、神経再生に関する講演が10題、また「疼痛ケア」に関するInstructional courseが組まれていた。
 脊髄損傷後の異常疼痛は約50%の症例に認められ、オピオイドも含めた薬物治療がほぼ無効な症例が多数を占めることが報告されていた。本邦でも導入可能な試みとしては、カナダ・オーストラリアでの脊髄損傷後の疼痛ケアに関する取り組みが具体例として紹介されていた。
 オーストラリアでは、脊髄損傷患者に対するPain course for SCI (https://www.ecentreclinic.org/?q=SCIPainCourse) というサイト上にて、webにて慢性疼痛に関する講習を受講できるシステムが、MACQUARIE大学(シドニー)から報告されていた。慢性痛教育システムを利用して患者がweb上で講習をうけることで、痛みへの対処方法を学ぶことができ、こうした結果、痛みそのものの軽減や、うつや破局化指数などの各種評価スケールでの良好な改善が得られることが示されていた。また、難治性疼痛に対する知識の啓蒙と適切な対症療法が症状そのものを緩和することが示されていた。実際の臨床現場においては、オピオイドをはじめとする各種薬剤の減量が、こうした痛み教育に伴い可能になってくることも示されていた。
 カナダ、オンタリオ州での取り組みとしては、集学的アプローチの重要性が示されていた。リハビリスタッフや心理療法士、看護師、薬剤師、医師が定期的なカンファレンスを通して患者情報を共有化し、疼痛治療に関して様々なアプローチを話し合いながら進めていくことで、内服薬の減量とともに痛みの軽減、ADLの改善が得られるとのデータが示されていた。また、患者教育や医療者教育と1つとして、`The spinal cord injury pain book’などの書籍が紹介されていた。また、Ontario Neurotrauma Foundationの取り組みとして(http://onf.org/documents/other-documents-and-resources)、臨床的なケアの紹介などを積極的にweb上で公開している旨の報告があった。
 また、集学的な治療アプローチに基づくリハビリテーションの有効性についても多数の報告が行われていた。しかしこうしたセッションでのdiscussionでは、世界的に見て、重度脊髄障害に起因する慢性疼痛に対して、統一されたリハビリテーションプログラムが非常に少ないことが問題として挙げられており、各国での取り組みを話し合いながら、世界的にも画一的な治療プログラムが構築されていくことが切望されていた。
 今回の学会参加と研修では、脊髄損傷に伴う慢性疼痛においても、私たちが通常治療にあたる一般的な慢性痛患者と同様に、集学的なアプローチや痛み教育が重要であることが理解できた。また、世界的に見てもこうした慢性痛治療にまだゴールドスタンダードはなく、今後のデータ収集と解析もまた重要な研究課題であることを痛感した。

▶ 平成30年5月26日 沖藤晶子先生の講演会を開催しました

 平成30年5月26日(土)、CIVI 新大阪研修センターにて、ユタ大学医学部麻酔科の沖藤晶子先生をお招きして講演会を開催し、医師、理学療法士、作業療法士、臨床心理士、看護師等の医療関係者を中心に、約110名が参加しました。
 沖藤先生は「慢性疼痛と行動科学:Biopsychosocial モデルにおける行動学の役割と臨床への応用」と題して講演し、参加者は米国の先進的な研究に触れ、慢性疼痛治療における多職種アプローチの必要性を再認識しました。
 今後も講演会やセミナー等を通じて、慢性痛診療の重要性を広めていきたいと思います。

▶ 平成30年3月14日 2度目の外部評価を受審しました

 本事業の平成29年度の取組を評価し今後の活動に活かすため、標記外部評価を実施しました。昨年度に引き続き、認定NPO法人いたみ医学研究情報センターに評価を依頼しました。
 評価は、平成29年度事業計画書を基に「慢性痛教育センターの設置」「慢性痛教育に携わる分野の医療リーダーの養成」「慢性痛教育資材の開発」の3つの観点項目について実施されました。評価結果としては、平成28年度に引き続きほぼ計画どおりに進んでいるとの内容でした。
 本事業では、このたびの評価の結果を本HPにて広く社会に公表するとともに、外部有識者の声を基に、今後の事業実施に向けた改善に取組む所存です。

▶ 平成30年2月5日~9日 海外視察調査報告 -シドニー大学Royal North Shore Hospital Pain Management Centerにおける学際的痛み治療視察-

山口大学 理学療法士:田原周
滋賀医科大学 麻酔科講座:中西美保、作業療法士:園田悠馬
大阪大学 (疼痛医学寄附講座 臨床心理士:榎本聖香 自己負担により参加)

(参加者 計4名)

 我々は昨年度に続き、シドニー大学Royal North Shore Hospital(RNSH) Pain Management Centerにおける学際的痛み治療(ADAPT Program)の視察を行った。当センターでは慢性疼痛患者に対して集団認知行動療法を実施しており、ニコラス教授(Professor Michael Nicholas.PhD)の指揮により、数多くの臨床研究、良好な治療成績をあげている。
 ADAPTは3週間、計120時間の形式で行う集団認知療法である。入院形式であるが、患者は近隣のホテルに宿泊し、月曜日から金曜日の朝9時から夕方5時まで、スタッフによる痛み教育や運動療法を受ける形式となっている。ADAPTの治療スタッフは医師、看護師、理学療法士、臨床心理士で構成されているが、実際の指導は看護師、理学療法士、臨床心理士が中心となって行っている。
 我々はWeek2の視察を行った。Week2では痛み止めの減薬が行われるため、患者によっては吐き気、下痢、気分不良を呈す場合があり、非常に忍耐のいる1週間である。ADAPTを行っていく上でスタッフの慢性疼痛に対する知識・教育レベルが非常に高くチーム内の情報共有が徹底され、円滑にプログラムが進むように工夫されていた。またRNSHでは効率の良い診療体系が確立されており、質の高い慢性疼痛治療の提供を可能にしていた。
 我が国において、慢性疼痛診療における人材育成のための教育プログラムは、まだ発展途上である。現在、医療者教育プログラムが稼働し、慢性疼痛の教育が普及し始めている段階であるが、教育システムの普及による医療者の育成、人材育成が、今後の国内の慢性疼痛診療の発展に寄与すると考える。

▶ 平成29年3月20日 本事業主催「痛みの市民公開講座」を開催しました

 本事業では、3月20日にANAクラウンプラザホテル宇部において、一般市民を対象とした「痛みの市民公開講座」を開催し、約170人の方にご参加頂きました。
 本事業は、慢性の痛みの集学的診療に豊富な経験を有する5大学(山口大学、大阪大学、滋賀医科大学、愛知医科大学、東京慈恵会医科大学)が連携して行うもので、それぞれの大学のノウハウを活かして共通のカリキュラムを作成し、医学、歯学、薬学の卒前卒後教育、看護、臨床心理学の卒後教育を行い、地域医療の向上を目的としています。
 当日は、座長の田口病院長の進行で始まり、連携大学である愛知医科大学学際的痛みセンター牛田享宏教授の「動いて治せ 足腰の痛み」、京都府立医科大学疼痛・緩和医療学教室細川豊史教授の「痛みは我慢しなくてもいいのですよ」の2つの講演が行われました。両氏とも、痛みの治療に関しては著名な方で、豊富な治療経験に基づく説明は非常にわかり易く、痛みの原因や治療の方法、日常生活での注意点など参加者には貴重な講演となりました。
 本事業としては、今後もこのような市民公開講座を実施し、多くの市民に参加していただきたいと考えております。

▶ 平成29年2月25日 NPO法人の評価を受審しました

 本事業は、平成28年度~平成32年度までの5年間実施するものであるが、平成28年度の取組を評価し今後の活動に活かすため、標記外部評価を実施しました。慢性の痛みに関する外部有識者として認定NPO法人いたみ医学研究情報センターに評価を依頼しました。
 評価は、平成28年度計画書を基に「慢性痛教育センターの設置」「慢性痛教育に携わる分野の医療リーダーの養成」「慢性痛教育資材の開発」の3つの観点項目について実施され、ほぼ計画どおりに進んでいる旨の評価を得ました。
 本事業では、このたびの評価による外部有識者の声を基に、今後の事業実施に向けた改善に取組むこととしています。

▶ 平成29年1月30日~2月3日 海外視察調査報告 -オーストラリアでの慢性痛治療の現状について-

山口大学 整形外科:鈴木秀典、麻酔科蘇生科ペインクリニック:原田英宜
大阪大学 疼痛医療センター・臨床心理士:安達 友紀
滋賀医科大学 麻酔科・ペインクリニック科:岩下成人、理学療法士:久郷真人
東京慈恵会医科大学 麻酔科蘇生科ペインクリニック:恩田優子
愛知医科大学 学際的痛みセンター:池本竜則、看護学部:洞口典子

(参加者 計8名)

 上記メンバーにより、2017年1月30日から2月3日の5日間、シドニー大学Royal North Shore Hospital(RNSH)Pain Management Center(Professor Michel K Nicholas) における学際的な痛み治療を視察調査した。当センターは、Sydney大学におけるPain Management Research Instituteの教育、臨床研究の組織で、1994年から学際的な痛み治療を行っており、多くの研究成果を上げ、かつ最先端の治療が行われている。
 その治療法の中心となっている集団認知行動療法のプログラムは、ADAPT programと呼ばれ、外来患者向け、3週間120時間のプログラム(月~金曜日、9時~17時)で形成され、1グループ9-10人で構成されている。ADAPTを行うスタッフは、臨床心理士、理学療法士、看護師、医師で構成されているが、患者の指導は臨床心理士、理学療法士、看護師が中心となって行っている。
 総じていえることは、慢性痛治療の系統だったシステムが非常に効率よく作られている点と、医療スタッフの慢性痛に対する知識の深さであった。また、集学的治療を行うなかで、専門職としての医療スタッフの充実と教育レベルの高さは特筆すべき点である。
 慢性痛診療においては長い歴史を誇る施設であるが、我が国の診療システムも将来的には同様の診療体系が形作られていくであろうと感じさせられた。保険システムや医療システムの問題と連動させながら、我が国独自の診療体系を構築していければ幸いである。
 こうしたシステムを構築するうえでは、専門職としての人材育成が大前提の条件であり、現在私たちが作成を行っている、慢性痛教育プログラムの早期普及が、まずは現在の種々の問題点を解決しうる最初のステップであると実感させられた。