- 活動報告 -

▶ 令和3年2月25日 外部評価を受審しました

 今回で5度目となる認定NPO法人いたみ医学研究情報センターによる、令和2年度の取組みに関する外部評価を受審しました。今年度の評価は、「慢性痛教育プログラムの医療者への教育効果」「連携5大学間での大学講義での学生・大学院生への教育効果」「慢性痛教育プログラムのさらなる発展」の3つの観点項目について実施され、それぞれ5段階評価の4.0点、4.25点、4.5点との評価を得ました。(4はほぼ計画とおりに進んでいる、5は計画案に沿って事業は達成できているという評価内容です。)
 特に「連携5大学間での大学講義での学生・大学院生への教育効果」では、今年度は特に受講者獲得のための方策とそれに関する各大学の役割について協議し実行した結果、新規受講者数が目標の930名を大幅に上回った(目標の114%)との高評価を受けました。また、「慢性痛教育プログラムのさらなる発展」では、海外研修には多職種のチームで赴いており、医師間での情報共有や地域連携の構築を目指すだけでなく、職種間の連携、情報共有に力を入れている点について高評価を受けました。本事業では、このたびの評価の結果を本HPにて広く社会に公表するとともに、外部有識者の声を基に、今後の事業実施に向けた改善に取組む所存です。

▶ 令和3年1月23日 文部科学省 課題解決型高度医療人材養成プログラム-慢性の痛みに関する領域-オンライン合同報告会を開催しました

 1月23日(土)、文部科学省 課題解決型高度医療人材養成プログラム-慢性の痛みに関する領域-オンライン合同報告会を開催し、30名が参加しました。
 当事業が最終年度ということもあり、平成28年度文部科学省「課題解決型高度医療人材育成プログラム」慢性の痛みに関する領域 に採択された以下大学と合同でオンライン合同報告会を行い、各事業の取組状況について報告しました。
●山口大学・大阪大学・滋賀医科大学・愛知医科大学・東京慈恵会医科大学
 「慢性の痛みに関する教育プログラムの構築」
●三重大学・鈴鹿医療科学大学 「地域総活躍社会のための慢性疼痛医療者育成」
●名古屋市立大学 「慢性疼痛患者の生きる力を支える人材育成」

▶ 令和2年3月23日 リーダー研修会を開催しました

 3月23日(月)、慢性痛医療のリーダー養成を目的とした海外研修の参加者等による報告会を web上で開催し、19名が参加した。
 ボストン大学並びにシドニー大学で海外研修を行った、山口大学の森先生と田原先生より、それぞれ以下のとおり報告があった。

【ハーバード大学 Brigham and Women’s Hospital (BWH) Pain Management Centerにおける慢性疼痛治療見学 -山口大学麻酔科 森亜希先生-】
● Health Care Center, Chestnut Hill
多くの患者に強オピオイドが使用されており、また侵襲的な治療を積極的に行っていた。新規患者が Primary Doctorから直接心理部門に紹介されたケースに立ち会ったが、日本では臨床心理士が初診で他の病院からの紹介患者を診察することはなく、アメリカの医療体制の特徴だと感じた。

● Brigham and Women’s Hospital Main Campus
手術室で Dr. Rossによる3件の手術を見学した。Spinal Code Stimulation(SCS:脊髄刺激装置)植え込み術 2件と Intrathecal Morphine(モルヒネ髄腔内投与療法)の Pump Exchange 1件である。

● Brigham and Women’s Faulkner Hospital
Dr. Yongの外来、手術、リハビリを見学した。この病院は、Spinal Centerと呼ばれるが、三叉神経痛の新患も受入れ、痛み全般の診療を行っている。また、退院後のリハビリの必要性の判断に重きを置いていた。この病院では、今後日本に入ってくるであろう処置 2例を見学した。一つは、下肢の Complex Regional Pain Syndrome(CRPS:複合性局所疼痛症候群)に対する ProclaimTM DRG Neurostimulatorの植え込み術である。二つ目は、腰部脊柱管狭窄症に対して、Vertiflex社製のSuperion®というデバイス留置を全身麻酔下に留置する手術である。

総括・感想
● 慢性疼痛患者に強オピオイドを使用している。
● 侵襲的治療が多く行われている。
● 臨床心理士が慢性疼痛治療に参加している。
● アメリカの医療保険制度の下では、受けられる医療サービスが制限される。
● 受診する患者の訴え、疾患は日本と同じである。

【シドニー大学Royal North Shore Hospital(RNSH)Pain Management Center(Professor Michael K Nicholas) における学際的な痛み治療の視察 -山口大学理学療法士 田原周先生-】
● ADAPT Program(集団認知行動療法プログラム)の紹介
1グループ 6~7人、3週間 120時間のプログラムで、理学療法士、臨床心理士、看護師中心に行われている。かかりつけ医からの紹介を受けた患者が直接プログラムに参加したり(プログラムの適応外と判断される場合もある)、理学療法士や臨床心理士の介入を経て、プログラムに参加する場合もある。
1週目は、目標設定、運動量設定、痛み教育、2週目は、薬の減量、痛み教育、運動療法、外出訓練、3週目は、痛み教育、運動療法、外出訓練といった内容になっている。運動療法はセルフエクササイズが中心。また、復職に向けた訓練も行われている。突発痛が起こった際の対策や外出時に調子が悪くなった際の対策なども個別に考えられている。プログラムのためのシステムが確立されていること、慢性疼痛患者にかかわるスタッフの充実、また、スタッフ同士の連携が徹底していることが印象的であった。

 報告を受け、会議参加者による意見交換が行われ、プライマリケアを丁寧に行うことで患者の症状に合った適切な医療を効率よく提供できること、看護師教育の重要性などが話し合われた。海外研修を通じて見識が広がり、自分たちの置かれた環境で、何ができていて何ができていないのかを確認することができた。今後の日本の診療システムに生かすべき点を確認する有意義な報告会となった。

▶ 令和2年2月10日~14日 海外研修報告 <ハーバード大学Brigham and Women’s Hospital (BWH) Pain Management Centerにおける慢性疼痛治療見学>

・期 間  令和2年2月10日~14日(5日間)
・参加者  山口大学 麻酔科医師:森亜希 (整形外科医師:鈴木秀典 自己負担により参加)

【 施設紹介・研修内容 】
 我々は、ハーバード大学関連病院の一つであるBrigham and Women’s Hospital (BWH) を訪問した。BWHは多数の病院を持ち、今回は特にPain Management Centerと関連する病院である①Health Care Center, Chestnut Hill、 ②Brigham and Women’s Hospital Main Campus、 ③Brigham and Women's Faulkner Hospitalの3病院を見学した。

①Health Care Center, Chestnut Hill
 多くの患者に強オピオイドが使用されており、また侵襲的な治療を積極的に行っていた。Primary Doctorからの新規紹介患者は、血液検査や画像診断を済ませており、問診、診察などすべてを一人の医師が行う日本と比べ、役割分担されていることが印象的であった。また、Primary Doctorから心理部門に紹介された新規患者の診察に立ち会ったが、日本では、臨床心理士が初診で他の病院からの紹介患者を診察することはなく、これがアメリカの医療体制の特徴だと感じた。日本では疼痛治療の現場に臨床心理士が参加する施設はほとんどなく、特に外来では医師一人で心理面や理学療法のアドバイスまで行う。日本の保険適用での臨床心理士による診療の点数化が望まれる。リハビリテーションの理学療法士からも話を聴いたが、具体的なプログラムはなく、個々に適したプランを作成し、理学療法を行っているとのことであった。

②Brigham and Women’s Hospital Main Campusp
 793床を有するハーバード大学医学部関連の非営利教育病院であり、多くのResidentとFellowがいる。また、我々が訪れた手術室だけでも48室あった。この手術室でDr. Rossによる3件の手術を見学した。Spinal Code Stimulation (SCS:脊髄刺激装置) 植え込み術2件とIntrathecal Morphine(モルヒネ髄腔内投与療法)のPump Exchange 1件である。前者は鎮静下で行い、刺激時には覚醒で確認していた。また、Pump Exchangeは全身麻酔下で行い、Pumpの電池は7年ごとに交換する。いずれも日帰り手術で、費用面からも入院は避けられていた。

③Brigham and Women’s Faulkner Hospitalp
 Dr. Yongの外来、手術、リハビリを見学した。この病院は、Spinal Center(脊椎脊髄センター)でもあり、その特徴が表れた病院である。Dr. Andrewは、内視鏡下手術を専門にしており、それを和歌山県立医科大学で学んだと聞き、日本で習得した技術がアメリカで広く行われていると知った。Spinal Centerと呼ばれるが、三叉神経痛の新患も受入れ、痛み全般の診療を行っている。また、退院後のリハビリの必要性の判断に重きを置いていた。慢性疼痛患者にとってリハビリは重要だが、金銭的な問題で中断せざるを得ない患者もおり、アメリカの保険制度には問題もある。この病院では、日本では聞いたことがない処置の2例を見学した。一つは、下肢のComplex Regional Pain Syndrome (CRPS:複合性局所疼痛症候群)に対するProclaimTM DRG Neurostimulatorの植え込み術である。これは、Doral root ganglion(DRG:脊髄後根神経節)にリードを留置し、刺激装置を植え込む手術で、鎮静下で行われる。二つ目は、腰部脊柱管狭窄症に対して、Vertiflex 社製のSuperion®というデバイス留置を全身麻酔下に留置する手術である。これは、前屈位で間欠跛行や下肢の痺れ・痛みが軽減する症例に対して、Superion® を留置すると後方から脊柱管が拡大するという理論で行われていた。まだアメリカ国内でしか実施されていない処置である。

【 総括・感想 】
 日本では慢性疼痛患者に対する侵襲的治療は限られているが、アメリカでは多数実施されていた。強オピオイドも多くの患者に使用されていた。
 日本では、慢性疼痛治療における臨床心理士による診療は保険点数がつかず、臨床心理士を慢性疼痛の現場で雇うことは難しいが、今回の研修で臨床心理士の役割は大きいことがわかり、今後日本でも慢性疼痛治療での保険点数化を期待する。
 職種では、日本にはないMid-level providerと呼ばれるPhysician Assistantがいて、診療がスムーズに行われていたことが印象的だった。
 アメリカでは、公的医療保険制度は受給資格者のみに適用され、その他の人は民間保険への加入が必要で、受けられる医療が制限されるため、入院での集学的治療は行えず、外来での治療になるケースが多い。現在の日本で慢性疼痛を入院して行えることは患者にとっては恵まれた環境であると言える。
 すべての病院に共通する特徴は、早朝から出勤し、手術は朝7時半から、外来は朝8時半頃に開始し、夕方5時には帰宅することを前提に診療が行われていることである。これはスタッフのQOLもさることながら、いつも病院に問い合わせ、受診ができるわけではないことの患者教育にもなっていると感じた。
 また、病院外でも救急車の出動が少ない印象だった。これも、費用の問題から、気軽に救急車を「呼べない、呼ばない」ことの現われだと感じた。日本が見習うべき点であるとも言える。
 わが国で慢性疼痛診療が重要であることは、徐々に浸透してきている。しかし、多職種の人達が慢性疼痛診療の教育プログラムを受け始めた段階であり、今後はこの教育を受けた医療者が新たな人材育成を行い、わが国の慢性疼痛診療を発展させていく必要があると思われる。

▶ 令和2年1月14日 外部評価を受審しました

 令和元年12月に、今回で4度目となる認定NPO法人いたみ医学研究情報センターによる、令和元年度の取組みに関する外部評価を受審しました。
 評価は「慢性痛教育センターの設置後の運用について」「慢性痛教育に携わる分野の医療リーダーの養成」「慢性痛教育資材の開発後の利用促進」の3つの観点項目について実施され、それぞれ5段階評価の4.75点、4.0点、4.5点との評価を得ました。(4はほぼ計画とおりに進んでいる、5は計画案に沿って事業は達成できているという評価内容です。)
 特に「慢性痛教育センターの設置後の運用について」の項目では、山口大学の市民公開講座や滋賀医科大学の県との連携など、医療従事者以外にも広く慢性疼痛に関する知識を広める活動を行っており事業目標を達成することができているとの高評価を受けました。
 本事業では、このたびの評価の結果を本HPにて広く社会に公表するとともに、外部有識者の声を基に、今後の事業実施に向けた改善に取組む所存です。

▶ 令和元年11月4~7日 International Spinal Cord Society (ISCOS) 2019に参加しました

参加者  山口大学大学院医学系研究科整形外科学: 鈴木秀典

 本年度も昨年に引き続き、11月4~7日にかけてISCOSに参加いたしました。本年度はニース(フランス)で学会が開催されました。
 脊髄障害に伴う疼痛の問題に関しては、workshop: 2演題、口演:10演題、ポスター発表:6演題で取り上げられていました。
 Workshopのセッションでは、感覚障害の高位などを含めた、国際的な障害分類についての報告と提案がなされていました。また新たな治療として、Virtual Realityを用いたリハビリテーションによる、運動麻痺の改善と疼痛の軽減の可能性について報告されていました。口演では、イギリス、イタリア、スイス、デンマーク、オーストラリア、日本を中心に各国の疫学調査や患者データが示されていました。本邦からの報告では、慢性期脊髄損傷患者の神経障害性疼痛の割合は、これまでの報告よりは少なく8%程度でありましたが、もっとも日常生活で感じるADL障害は「疼痛」であったと報告されていました。また車いす移乗動作や操作に伴う「肩痛」の報告、我が国では承認されていませんが、デンマークで現在進んでいるCannabisによる脊髄障害や多発性硬化症に伴う難治性疼痛治療に関する臨床治験などが報告されていました。また、私たちも現在行っております、functional MRIを用いた研究では、脳内での機能障害が難治性疼痛に関係しているとの報告がなされていました。
 各種薬物治療の報告はなされておりましたが、根本的な脊髄障害の治療、難治性疼痛の将来の治療をリードしているのは、やはり細胞移植療法などの再生医療の領域でした。この領域に関しては、日本が世界をリードしており、国際学会の場でもリーダー的な立ち位置であったことは誇らしいことでありました。私たち山口大学でも脊髄損傷などを中心に疼痛と脳機能の関係を同定する臨床研究、幹細胞を用いた臨床治験などを現在進行形ですすめております。こうした取り組みが、10年先の医療現場での一般的治療となることを確信するとともに、世界をリードできる次世代の基礎研究をさらにすすめていく必要性を痛感いたしました。以上、国際学会での研修について、ご報告をさせていただきました。

▶ 2019年3月21日 慢性痛教育センター主催「宇部・山陽小野田市民公開講座」を開催しました

 2019年3月21日(木)、ANAクラウンプラザホテル宇部で「宇部・山陽小野田市民公開講座~痛みでお悩みのあなたのために~」を開催し、一般市民や医療関係者ら 約90名が参加した。
 本学医学系研究科整形外科学講座の坂井教授の挨拶に続き、同講座鈴木助教が「慢性の痛みに関する山口大学での取り組み」と題して講演し、原因を特定できる器質的な痛みの他に、さまざまな要因の絡む機能的な痛みがあり、総合的な診察が必要だが、今の医学教育では痛みを系統立って学べないため対応が難しく、診察が不十分に終わるという問題がある。その解決のために文部科学省や厚生労働省がさまざまな事業を展開しており、山口大学も本講座をはじめとする取組みを実施し、総合的診療のためのペインセンターを立ち上げたと説明があった。また、自身が行っている外科的処置や近い将来実現見込みの臨床治験についての解説も行われた。
 麻酔・蘇生学講座の原田助教の「慢性の痛み診療の実際」と題した講演では、患者さんはとにかく痛みを止めてほしくて受診するが、痛みに万能薬はなく、慢性疼痛は除去できないため、生活の質の改善を目標にすべきで、運動療法の必要性や痛いから動きたくないと生活を変えない患者さんの意識改革のための患者教育の重要性、適切な運動のための診断の大切さについて説明があった。
 最後に、山口労災病院院長の田口敏彦先生が「腰痛でお悩みですか-腰痛の原因と対策-」と題して講演し、腰痛は高血圧や歯の病気と並び多い主訴であること、なぜ腰痛が起こるのかを椎間板の説明を入れてわかりやすく解説し、これまで原因がわかる腰痛は20%とされていたが、調査「山口pain study」により、整形外科医が丁寧に診断すれば、80%は原因を特定できることがわかったとの報告や、腰痛体操や日常生活における留意点についての説明があった。また、日常生活でやりたいことをやれることを治療の目標とすべきで、痛みを取り除くことは手段である。痛みのない日が幸せなのではなく、やりたいことをやれた日が幸せなのだと強調された。
 参加者からは、とても分かりやすかった、治療イコール生活できることだと分かり痛みに悩んでいたが安心した、との感想が寄せられ、参加者が痛みの診療への理解を深めた貴重な機会となった。

▶ 2019年3月2日 3度目の外部評価を受審しました

 平成28年度、29年度に引き続き、今後の事業内容の改善や活動に活かすため、認定NPO法人いたみ医学研究情報センターによる、平成30年度の取組みに関する外部評価を受審しました。
 評価は「慢性痛教育センターの設置」「慢性痛教育に携わる分野の医療リーダーの養成」「慢性痛教育資材の開発」の3つの観点項目について実施され、5段階評価の「4.ほぼ計画とおりに進んでいる」との評価を得ました。また、特にe-learning教材について、「幅広い分野を網羅しており、内容も理解しやく十分な知識の習得が可能であり、慢性痛教育に携わるリーダーの養成につながる」との高評価を受けました。本事業では、このたびの評価の結果を本HPにて広く社会に公表するとともに、外部有識者の声を基に、今後の事業実施に向けた改善に取組む所存です。

▶ 平成30年9月12~15日 2018 ISCoS Annual Scientific Meetingに参加しました

参加者  山口大学大学院医学系研究科整形外科学: 鈴木秀典

 2018年9月13-15日のISCoS 2018 – 57th ISCoS combined with the 25th ANZSCoS Annual Scientific Meetingと9月12日に開催されたpre-meetingに参加した。日常診療で遭遇する難治性疼痛の代表的基礎疾患は、重度脊髄障害や脊髄損傷に伴う異常疼痛やアロデニアである。本学会では、世界中から脊髄障害を中心にした多くの発表と講演が毎年行われている。特に脊髄障害と難治性疼痛に関してのリハビリや疼痛ケアに関するトピックスは、日常診療で多くの問題を生じている領域であるにもかかわらずまとまった知識の習得や意見交換を行う場が本学会以外にはないのが実情である。根本的な治療法としての種々の神経再生にかかわる最新の臨床治験データが示されるのも本学会の特徴である。
 脊髄障害と疼痛に関しては、4題の口演と3題のポスター発表、神経再生に関する講演が10題、また「疼痛ケア」に関するInstructional courseが組まれていた。
 脊髄損傷後の異常疼痛は約50%の症例に認められ、オピオイドも含めた薬物治療がほぼ無効な症例が多数を占めることが報告されていた。本邦でも導入可能な試みとしては、カナダ・オーストラリアでの脊髄損傷後の疼痛ケアに関する取り組みが具体例として紹介されていた。
 オーストラリアでは、脊髄損傷患者に対するPain course for SCI (https://www.ecentreclinic.org/?q=SCIPainCourse) というサイト上にて、webにて慢性疼痛に関する講習を受講できるシステムが、MACQUARIE大学(シドニー)から報告されていた。慢性痛教育システムを利用して患者がweb上で講習をうけることで、痛みへの対処方法を学ぶことができ、こうした結果、痛みそのものの軽減や、うつや破局化指数などの各種評価スケールでの良好な改善が得られることが示されていた。また、難治性疼痛に対する知識の啓蒙と適切な対症療法が症状そのものを緩和することが示されていた。実際の臨床現場においては、オピオイドをはじめとする各種薬剤の減量が、こうした痛み教育に伴い可能になってくることも示されていた。
 カナダ、オンタリオ州での取り組みとしては、集学的アプローチの重要性が示されていた。リハビリスタッフや心理療法士、看護師、薬剤師、医師が定期的なカンファレンスを通して患者情報を共有化し、疼痛治療に関して様々なアプローチを話し合いながら進めていくことで、内服薬の減量とともに痛みの軽減、ADLの改善が得られるとのデータが示されていた。また、患者教育や医療者教育と1つとして、`The spinal cord injury pain book’などの書籍が紹介されていた。また、Ontario Neurotrauma Foundationの取り組みとして(http://onf.org/documents/other-documents-and-resources)、臨床的なケアの紹介などを積極的にweb上で公開している旨の報告があった。
 また、集学的な治療アプローチに基づくリハビリテーションの有効性についても多数の報告が行われていた。しかしこうしたセッションでのdiscussionでは、世界的に見て、重度脊髄障害に起因する慢性疼痛に対して、統一されたリハビリテーションプログラムが非常に少ないことが問題として挙げられており、各国での取り組みを話し合いながら、世界的にも画一的な治療プログラムが構築されていくことが切望されていた。
 今回の学会参加と研修では、脊髄損傷に伴う慢性疼痛においても、私たちが通常治療にあたる一般的な慢性痛患者と同様に、集学的なアプローチや痛み教育が重要であることが理解できた。また、世界的に見てもこうした慢性痛治療にまだゴールドスタンダードはなく、今後のデータ収集と解析もまた重要な研究課題であることを痛感した。

▶ 平成30年5月26日 沖藤晶子先生の講演会を開催しました

 平成30年5月26日(土)、CIVI 新大阪研修センターにて、ユタ大学医学部麻酔科の沖藤晶子先生をお招きして講演会を開催し、医師、理学療法士、作業療法士、臨床心理士、看護師等の医療関係者を中心に、約110名が参加しました。
 沖藤先生は「慢性疼痛と行動科学:Biopsychosocial モデルにおける行動学の役割と臨床への応用」と題して講演し、参加者は米国の先進的な研究に触れ、慢性疼痛治療における多職種アプローチの必要性を再認識しました。
 今後も講演会やセミナー等を通じて、慢性痛診療の重要性を広めていきたいと思います。

▶ 平成30年3月14日 2度目の外部評価を受審しました

 本事業の平成29年度の取組を評価し今後の活動に活かすため、標記外部評価を実施しました。昨年度に引き続き、認定NPO法人いたみ医学研究情報センターに評価を依頼しました。
 評価は、平成29年度事業計画書を基に「慢性痛教育センターの設置」「慢性痛教育に携わる分野の医療リーダーの養成」「慢性痛教育資材の開発」の3つの観点項目について実施されました。評価結果としては、平成28年度に引き続きほぼ計画どおりに進んでいるとの内容でした。
 本事業では、このたびの評価の結果を本HPにて広く社会に公表するとともに、外部有識者の声を基に、今後の事業実施に向けた改善に取組む所存です。

▶ 平成30年2月5日~9日 海外視察調査報告 <シドニー大学Royal North Shore Hospital Pain Management Centerにおける学際的痛み治療視察>

山口大学 理学療法士:田原周
滋賀医科大学 麻酔科講座:中西美保、作業療法士:園田悠馬
大阪大学 (疼痛医学寄附講座 臨床心理士:榎本聖香 自己負担により参加)

(参加者 計4名)

 我々は昨年度に続き、シドニー大学Royal North Shore Hospital(RNSH) Pain Management Centerにおける学際的痛み治療(ADAPT Program)の視察を行った。当センターでは慢性疼痛患者に対して集団認知行動療法を実施しており、ニコラス教授(Professor Michael Nicholas.PhD)の指揮により、数多くの臨床研究、良好な治療成績をあげている。
 ADAPTは3週間、計120時間の形式で行う集団認知療法である。入院形式であるが、患者は近隣のホテルに宿泊し、月曜日から金曜日の朝9時から夕方5時まで、スタッフによる痛み教育や運動療法を受ける形式となっている。ADAPTの治療スタッフは医師、看護師、理学療法士、臨床心理士で構成されているが、実際の指導は看護師、理学療法士、臨床心理士が中心となって行っている。
 我々はWeek2の視察を行った。Week2では痛み止めの減薬が行われるため、患者によっては吐き気、下痢、気分不良を呈す場合があり、非常に忍耐のいる1週間である。ADAPTを行っていく上でスタッフの慢性疼痛に対する知識・教育レベルが非常に高くチーム内の情報共有が徹底され、円滑にプログラムが進むように工夫されていた。またRNSHでは効率の良い診療体系が確立されており、質の高い慢性疼痛治療の提供を可能にしていた。
 我が国において、慢性疼痛診療における人材育成のための教育プログラムは、まだ発展途上である。現在、医療者教育プログラムが稼働し、慢性疼痛の教育が普及し始めている段階であるが、教育システムの普及による医療者の育成、人材育成が、今後の国内の慢性疼痛診療の発展に寄与すると考える。

▶ 平成29年3月20日 本事業主催「痛みの市民公開講座」を開催しました

 本事業では、3月20日にANAクラウンプラザホテル宇部において、一般市民を対象とした「痛みの市民公開講座」を開催し、約170人の方にご参加頂きました。
 本事業は、慢性の痛みの集学的診療に豊富な経験を有する5大学(山口大学、大阪大学、滋賀医科大学、愛知医科大学、東京慈恵会医科大学)が連携して行うもので、それぞれの大学のノウハウを活かして共通のカリキュラムを作成し、医学、歯学、薬学の卒前卒後教育、看護、臨床心理学の卒後教育を行い、地域医療の向上を目的としています。
 当日は、座長の田口病院長の進行で始まり、連携大学である愛知医科大学学際的痛みセンター牛田享宏教授の「動いて治せ 足腰の痛み」、京都府立医科大学疼痛・緩和医療学教室細川豊史教授の「痛みは我慢しなくてもいいのですよ」の2つの講演が行われました。両氏とも、痛みの治療に関しては著名な方で、豊富な治療経験に基づく説明は非常にわかり易く、痛みの原因や治療の方法、日常生活での注意点など参加者には貴重な講演となりました。
 本事業としては、今後もこのような市民公開講座を実施し、多くの市民に参加していただきたいと考えております。

▶ 平成29年2月25日 NPO法人の評価を受審しました

 本事業は、平成28年度~平成32年度までの5年間実施するものであるが、平成28年度の取組を評価し今後の活動に活かすため、標記外部評価を実施しました。慢性の痛みに関する外部有識者として認定NPO法人いたみ医学研究情報センターに評価を依頼しました。
 評価は、平成28年度計画書を基に「慢性痛教育センターの設置」「慢性痛教育に携わる分野の医療リーダーの養成」「慢性痛教育資材の開発」の3つの観点項目について実施され、ほぼ計画どおりに進んでいる旨の評価を得ました。
 本事業では、このたびの評価による外部有識者の声を基に、今後の事業実施に向けた改善に取組むこととしています。

▶ 平成29年1月30日~2月3日 海外視察調査報告 -オーストラリアでの慢性痛治療の現状について-

山口大学 整形外科:鈴木秀典、麻酔科蘇生科ペインクリニック:原田英宜
大阪大学 疼痛医療センター・臨床心理士:安達 友紀
滋賀医科大学 麻酔科・ペインクリニック科:岩下成人、理学療法士:久郷真人
東京慈恵会医科大学 麻酔科蘇生科ペインクリニック:恩田優子
愛知医科大学 学際的痛みセンター:池本竜則、看護学部:洞口典子

(参加者 計8名)

 上記メンバーにより、2017年1月30日から2月3日の5日間、シドニー大学Royal North Shore Hospital(RNSH)Pain Management Center(Professor Michel K Nicholas) における学際的な痛み治療を視察調査した。当センターは、Sydney大学におけるPain Management Research Instituteの教育、臨床研究の組織で、1994年から学際的な痛み治療を行っており、多くの研究成果を上げ、かつ最先端の治療が行われている。
 その治療法の中心となっている集団認知行動療法のプログラムは、ADAPT programと呼ばれ、外来患者向け、3週間120時間のプログラム(月~金曜日、9時~17時)で形成され、1グループ9-10人で構成されている。ADAPTを行うスタッフは、臨床心理士、理学療法士、看護師、医師で構成されているが、患者の指導は臨床心理士、理学療法士、看護師が中心となって行っている。
 総じていえることは、慢性痛治療の系統だったシステムが非常に効率よく作られている点と、医療スタッフの慢性痛に対する知識の深さであった。また、集学的治療を行うなかで、専門職としての医療スタッフの充実と教育レベルの高さは特筆すべき点である。
 慢性痛診療においては長い歴史を誇る施設であるが、我が国の診療システムも将来的には同様の診療体系が形作られていくであろうと感じさせられた。保険システムや医療システムの問題と連動させながら、我が国独自の診療体系を構築していければ幸いである。
 こうしたシステムを構築するうえでは、専門職としての人材育成が大前提の条件であり、現在私たちが作成を行っている、慢性痛教育プログラムの早期普及が、まずは現在の種々の問題点を解決しうる最初のステップであると実感させられた。